認知症ケアで拒否があるときは、説得を強めるほど不安が大きくなることがあります。まず本人の意思表示として受け止め、痛み、寒さ、羞恥心、説明のわかりにくさなどを観察します。

この記事の要点

認知症ケアで拒否があるときの声かけ|否定しない関わり方の結論

認知症ケアで拒否がある場面を、本人の意思表示と背景観察に分けて捉え、短い声かけ、選択肢、記録、相談につなげる方法を整理します。

  • 拒否は「わがまま」ではなく、不安、痛み、羞恥心、理解しにくさのサインであることがあります。
  • 否定や説得の前に、本人の言葉を受け止め、短い言葉で見通しと選択肢を伝えます。
  • うまくいった声かけや時間帯も、うまくいかなかった場面も記録し、チームで共有します。

1拒否の背景を決めつけない

「入浴を嫌がる」「食事を拒む」と見える場面でも、背景には寒さ、痛み、羞恥心、疲労、音や人の多さ、説明が理解しにくいことなどがあります。拒否を性格の問題として片づけると、本人の意思や支援の手がかりを見落とします。

まずは、いつ、どこで、誰が、どの声かけをしたときに拒否が出たのかを観察します。第264回介護給付費分科会の資料でも、認知症の人本人の声や意思の尊重が示されています。現場では制度論を先取りするのではなく、本人が何に困っているのかを記録から見直します。

背景を見る

否定しない

見通しを伝える

2短い言葉で見通しを伝える

説明が長くなると、本人が途中で混乱することがあります。「これから手を洗います」「椅子に座ってから靴を履きます」のように、一つずつ短く伝えます。

選択肢も多すぎると負担になります。「今行きますか、少し休んでからにしますか」のように、選びやすい二択にすると受け止めやすくなることがあります。毎回同じ言葉でうまくいくとは限らないため、本人の反応を見て言い方や順番を調整します。

3本人の言葉を一度受け止める

「帰りたい」「お風呂は嫌」と言われたとき、すぐに否定すると不安が強まることがあります。「帰りたいんですね」「嫌なんですね」と受け止め、表情や声量を落ち着けます。

受け止めた後で、必要なケアにつなげます。「少し休んでから、温かいタオルで手だけ拭きましょうか」のように、負担の少ない提案から始める方法もあります。ただし、体調不良、痛み、転倒リスク、服薬や食事の安全に関わる場面では、介護職だけで判断せず施設ルールに沿って相談します。

4うまくいった関わりを記録する

認知症ケアでは、うまくいかなかった場面だけでなく、落ち着いた声かけ、拒否が少なかった時間帯、本人が選びやすかった環境も記録します。記録は本人を評価する文章ではなく、チームが同じ支援を試すための材料です。

「午後より午前の方が入浴の受け入れがよい」「A職員が浴室の温度を先に伝えると更衣を始められた」など、場面と言葉を残します。表現に迷う場合は介護記録のNG表現と言い換えの考え方と合わせて確認します。

5専門的な評価と決めつけを分ける

「拒否が強い人」「問題行動」といった決めつけは避けます。一方で、根拠あるアセスメントやチームでの評価まで書かない、という意味ではありません。認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドラインは、本人が自らの意思に基づいて生活できることを目指す資料です。

記録では、「本人は寒いと発言」「脱衣所の温度を上げた後は手浴を受け入れ」「次回は入浴前に室温と説明順を確認」のように、本人の言葉、観察、対応、次の確認を分けます。その材料をもとに、管理者、看護職、ケアマネジャーなどと支援方法を見直します。

6まとめ

拒否がある場面では、否定や説得を強める前に、本人の意思表示として受け止め、背景を観察し、短い言葉で見通しを伝えます。うまくいった関わりも迷った点も記録し、必要な相談につなげることで、次の支援をチームで考えやすくなります。

7よくある失敗と対策

よくある失敗対策
拒否を性格やわがままと決めつける本人の意思表示として受け止め、痛み、羞恥心、疲労、環境、説明のわかりにくさを観察します。
説得の言葉が長くなる一文を短くし、行動を一つずつ伝え、選択肢を増やしすぎないようにします。
うまくいった声かけが共有されない時間帯、言葉、環境、本人の反応を記録し、次の支援で試せる形にします。
介護職だけで継続可否を判断する体調変化や安全上の不安がある場面は、施設ルールに沿って看護職や管理者へ相談します。

8よくある質問

拒否が強いときはどう声をかけますか?

まず無理に進めず、「嫌なんですね」「少し休みましょうか」と受け止めます。その後、本人の表情や体調を見ながら、短い説明と選択肢で次の行動を提案します。

毎回同じ場面で拒否が出る場合は?

時間帯、場所、職員、声かけ、痛みや疲労などを記録し、拒否が出にくい条件をチームで探します。体調変化や安全上の不安があれば、施設ルールに沿って看護職や管理者へ相談します。

本人の拒否を記録するときの注意点は?

「拒否が強い」とだけ書かず、本人の言葉、場面、介助前の説明、体調や環境、こちらの対応、その後の反応を分けて記録します。

参考・出典