厚生労働省の新着情報で2026年8月26日に「自分らしく生きるための『人生会議』ポータルサイト」が案内されました。介護現場で本人の思いを聞き取り、医療判断にせず共有メモへつなぐ実務を整理します。

この記事の要点

人生会議ポータル|介護現場の共有メモの結論

厚労省の人生会議ポータルをきっかけに、介護現場で本人の価値観や希望を聞き取り、医療判断にせずチーム共有メモへ残す流れを整理します。

  • 厚生労働省は人生会議を、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い共有する取組として案内しています。
  • 介護職が現場で残すのは治療方針の決定ではなく、本人が大切にしたいこと、不安、家族へ伝えたいこと、次に確認する相手を整理した共有メモです。
  • 本人の思いは変わり得るため、一度聞いた内容を固定的な結論にせず、日付、場面、発言、共有先、次回確認日を残してチームで更新します。

1人生会議ポータルを現場の対話に使う

厚生労働省の新着情報では、2026年8月26日に「自分らしく生きるための『人生会議』ポータルサイト」が案内されました。厚労省は人生会議を、もしものときのために望む医療やケアを前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組として説明しています。

介護現場で大切なのは、ポータルサイトを「看取りの結論を決める資料」として使わないことです。まずは本人が大切にしている生活、会いたい人、不安、避けたいこと、家族へ伝えたいことを聞き、次に誰へつなぐかを整理する入り口として使います。

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人生会議

本人の思い

共有メモ

2介護職が残すのは医療判断ではない

人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関する厚労省ガイドラインでは、本人による意思決定を基本に、多職種の医療・介護従事者からなる医療・ケアチームで十分に話し合うことが重視されています。医療・ケア行為の開始、不開始、変更、中止は、医学的妥当性や適切性を踏まえた慎重な判断が必要です。

そのため介護職の記録は、「延命治療を希望しないと決定」のように書き切らない方が安全です。現場で聞いた事実として、「本人は『家で過ごしたい気持ちが強い』と話した」「長女へ相談したいとの発言あり」「看護職とケアマネへ共有予定」のように、発言と次の確認先を分けて残します。

3聞き取りは生活の言葉から始める

人生会議という言葉を出すと、本人や家族が身構えることがあります。最初から治療、看取り、急変時対応を聞くのではなく、「最近大切にしている時間は何ですか」「家族に伝えておきたいことはありますか」「不安なことは誰に相談したいですか」と、生活に近い言葉から始めます。

例えば入浴後の休憩中に「今日は庭の話をよくされていた」、面会後に「孫の入学式を楽しみにしていると話した」、夜間に「一人になると不安と発言した」など、普段のケアで拾える言葉があります。これらは治療方針ではありませんが、本人らしい支援を考える重要な材料になります。

4共有メモに入れる項目

共有メモは長い作文にせず、日付、場面、同席者、本人の言葉、家族等の反応、職員が確認したこと、次に相談する相手を並べます。本人の言葉はできるだけそのまま残し、職員の解釈は別にします。「家に帰りたい」だけではなく、「猫が心配で家に帰りたい」と背景まで残すと、次の支援につながります。

共有範囲も決めておきます。利用者全員が見る掲示や申し送りノートに細かな家族事情を書くのではなく、施設の記録ルールに沿って、必要な職員だけが確認できる場所へ残します。表現の整え方は介護記録のNG表現と言い換えと同じく、評価語より事実を優先します。

5家族等との温度差を急いで埋めない

本人の思いと家族等の受け止めが違うことは珍しくありません。本人は「自宅で過ごしたい」と話していても、家族は介護負担や急変時の不安から施設継続を望むことがあります。このとき介護職がどちらかを説得する立場になると、関係がこじれやすくなります。

現場では、本人の発言、家族等の不安、まだ確認できていない情報を分けて残します。「家族が反対」ではなく、「長男は夜間急変時の連絡体制を心配」「本人の希望は次回ケアマネ同席時に再確認予定」のように書くと、担当者会議や医療機関との連携へつなげやすくなります。家族相談の窓口整理は家族介護者支援の相談窓口も参考になります。

6思いは変わる前提で更新する

厚労省ガイドラインでは、本人の意思は時間の経過や心身の状態の変化によって変わり得るものとして、話し合いを繰り返すことが示されています。介護現場でも、一度聞いた希望を固定した結論として扱わず、状態変化、入退院、家族関係、季節行事、痛みや不安の変化に合わせて確認し直します。

更新するときは、古い記録を消すのではなく、「8月27日、前回と異なり『病院は不安』との発言あり。痛みが強い日の発言のため、看護職へ共有し次回面談で再確認」のように追記します。変化を矛盾として扱わず、チームが状況を読み取れる形にすることが大切です。

7申し送りで伝える範囲を絞る

申し送りでは、人生会議の内容をすべて読み上げる必要はありません。次勤務者が今日の支援で知っておくべきことに絞ります。「夕食後に長女へ電話希望あり」「夜間一人になる不安が強く、消灯前に声かけ予定」「次回担当者会議で本人の希望確認」といった、行動につながる情報を優先します。

医療機関や協力医療機関との共有が必要な場合は、施設のルールに沿って看護職、相談員、ケアマネジャー、管理者へつなぎます。会議で残す内容は協力医療機関の会議頻度で扱うように、誰が、いつ、何を確認するかまで明確にすると引き継ぎやすくなります。

8まとめ

人生会議ポータルは、介護職が医療判断を担うための資料ではなく、本人の価値観や希望をチームで共有するきっかけとして使えます。聞き取りでは、本人の生活の言葉、家族等の受け止め、次に確認する相手を分けて残します。

大切なのは、本人の思いを一度の発言で固定しないことです。日付、場面、発言、共有先、次回確認を残し、医師、看護職、ケアマネジャー、家族等とつなげる。小さな共有メモが、本人らしいケアを支える土台になります。

9よくある失敗と対策

よくある失敗対策
本人の発言を治療方針の決定として書き切る発言、場面、同席者、次に確認する専門職を分けて記録する
家族等との意見差を職員が説得で解決しようとする本人の思い、家族等の不安、未確認事項を整理し会議や相談員へつなぐ
一度聞いた希望をずっと最新情報として扱う状態変化や面談のたびに日付つきで追記し、変化をチームで確認する
申し送りで個人情報や家族事情を広く話しすぎる今日の支援に必要な配慮と次の確認事項に絞り、記録場所を分ける

10よくある質問

人生会議は介護職だけで進めてよいものですか?

介護職だけで医療やケアの方針を決めるものではありません。本人の価値観や希望を聞き取り、家族等、医師、看護職、ケアマネジャー、管理者など必要な関係者へ共有する材料として扱います。

人生会議の内容は介護記録にどう残しますか?

本人の発言、場面、同席者、確認できた希望、迷い、次に相談する相手を事実で残します。治療の可否や最終判断を書き切らず、医療・ケアチームで確認する事項として整理します。

本人の希望が前回と変わった場合はどうしますか?

前回と違うことを問題視せず、いつ、どの場面で、どのように話したかを追記します。必要に応じて家族等や医療・ケアチームへ共有し、最新の思いを確認し直します。

参考・出典