介護記録は、利用者の状態と支援内容をチームで共有するためのものです。人格を決めつける表現を避け、本人の言葉、観察した事実、職員の解釈、実施した支援と反応を区別します。根拠ある専門的な評価まで省くのではなく、何をもとに考えたかが伝わる記録に整えます。

この記事の要点

介護記録のNG表現と言い換え|事実が伝わる書き方の結論

「わがまま」「不穏」「拒否が強い」だけで終わる介護記録を、本人の言葉、観察事実、支援と反応が伝わる表現へ言い換えます。専門的な評価・推測は根拠を添え、事実と区別して残します。

  • 本人の言葉と観察した事実を残し、専門的な評価や推測は根拠を添えて事実と区別します。人格の決めつけで状態を説明しません。
  • 「不穏」「拒否」だけで終わらせず、場面、言葉、行動、対応後の反応を書きます。
  • 例文は編集部作成の架空例です。実際の発言・観察・支援・反応に置き換え、行っていない対応や報告を記録しません。

1事実と解釈を分けて記録する

「わがまま」など人格を決めつける言葉や、「問題行動」という評価語だけでは、何が起きたかが伝わりません。本人の言葉は誰の発言か分かるように示し、いつ、どこで、何を観察したか、どの支援を行い、どのような反応があったかを書きます。

専門的な評価や推測は、観察した事実とは分け、根拠を添えて残します。厚生労働省掲載の講師用ガイドラインでは、記録の客観的な内容と主観的な内容を分ける考え方が示されています。未確認の理由や職員の印象を、本人の状態の事実として断定しないことが大切です。

「介護過程 実践事例集」には、本人の主観的情報、観察情報、評価、計画をSOAP方式で区分する施設の実践例があります。評価自体を記録から除く説明ではありません。同資料は実践のヒントを紹介するもので、すべての施設に同じ様式を求めるものではありません。

事実と解釈を区別

評価の根拠

支援と反応

2よくあるNG表現と言い換え

以下は記録の原則を参考に編集部が作成した架空の言い換え例で、資料中の事例の転載ではありません。実際の時刻・発言・観察・支援・反応に置き換え、確認していない発言や観察結果、行っていない支援や報告、受けていない指示を記録しないでください。

「不穏」だけでは、何が起きたのかわかりません。「夕食前、居室内を歩き回り『帰りたい』と繰り返し発言。職員が隣で話を聞いた。その後、椅子に着席したのを確認」のように、場面、支援、その後に観察した行動を分けて残します。実際の記録では観察した時刻も記載します。着席した事実だけから「不安が解消した」とは断定しません。

「拒否が強い」も同様です。「入浴の声かけに対し『寒いから嫌』と発言。手浴を提案したところ『それならよい』と話し、手浴を実施」のように、本人の言葉と実際に行った支援を記録します。これは本人の意向・体調・個別計画を確認し、手浴を行える条件が整っていた場合の例です。「受け入れあり」だけでは、手浴と入浴のどちらに同意したのか分かりません。

3本人の言葉を活かす

本人の言葉は、支援の手がかりになります。痛み、不安、寒さ、空腹、眠気など、拒否や混乱の背景を示すことがあります。

ただし、長い会話をそのまま全部書く必要はありません。支援に関係する言葉を短く引用し、対応と反応をセットで残します。例文と同じ対応がすべての人に適するとは限らないため、本人の意向と個別の支援計画を確認します。拒否がある場面の確認点は認知症ケアで拒否があるときの声かけも参照してください。

4次の職員が動ける申し送りにする

「看護職へ報告済み」だけでは、相手に何が伝わり、どの対応が決まったかを読み取れません。連絡した時刻・相手・内容、返答の有無、確認できた方針、実施した対応を分けます。「連絡を試みたがつながらない」「内容は伝達済み・返答待ち」「方針を確認済み・対応は未実施」も区別します。

次の確認は、本人の意向や個別計画、実際に確認できた方針をもとに整理します。誰が、どの場面や時期に、何を確認するのかを残し、未定の事項を決定済みの予定として書かないようにします。連絡状態を記録しただけで対応が終わるわけではありません。必要な支援・報告と、次の担当者への引継ぎを職場の手順に沿って行います。

次は編集部作成の架空例です。「入浴の声かけに『今日は入りたくない』と発言。入浴は未実施。担当リーダーへ本人の発言と未実施を報告。代替ケアの方針は返答待ち。次勤務の担当者へ未実施事項を伝達。担当者がリーダーへ方針を確認すると返答」。返答がなければ、入浴中止や代替ケアが決まったとは記録しません。この例は、返答まで必要な対応を待つ指示ではありません。

場面別の記録や引継ぎ例は申し送りの例文とテンプレートにまとめています。記録の言い換えと併せて、確認済みの方針・実施状況・次の確認点が伝わるかを見直します。

5ケア記録CSVで書き分けを練習する

記事末尾のケア記録テンプレートは、日付・時間・利用者名・ケア内容・状態・対応・記録者の7列がある空欄CSVです。練習では架空の利用者を設定し、「状態」に本人の言葉と観察事実、「対応」に実施した支援と反応を書いてみます。評価や未実施の予定を加える場合は、その区別が分かるように記します。これは編集部による練習方法の提案で、全国共通の正式様式ではありません。

CSVには連絡先・返答・次の担当者の専用列がありません。練習時は対応欄に見出しを付けて区別できますが、業務の記録先や必要項目は職場のルールに従います。実際の利用者情報を扱う前に、使用できる端末・保存先・共有範囲を職場で確認してください。

6よくある失敗と対策

よくある失敗対策
「不穏」「拒否」だけで終わる場面、言葉、行動、対応、その後の反応を短く書きます。
職員の解釈と観察した事実が混ざる本人の言葉・観察事実を示し、必要な解釈や評価はその根拠とともに分けて書きます。
「連絡済み」を対応完了として扱う伝達・返答・確認した方針・実施状況を分け、次に誰が何を確認するかを記します。

7よくある質問

「不穏」と書いてはいけませんか?

本記事は特定の単語を一律に禁止するものではありません。「不穏」だけで終わらせず、場面、本人の言葉、観察した行動、実施した支援と反応を具体的に書きます。職員の解釈は事実と区別して残します。

専門的な評価や推測は記録しない方がよいですか?

支援に必要な評価まで省く必要はありません。本人の発言や観察した事実と分け、どの情報を根拠に考えたかを示します。未確認のことは事実と断定せず、確認が必要な点として残します。記録様式は施設のルールに沿って使います。

返答待ちの連絡はどう記録しますか?

連絡した時刻・相手・内容と返答の有無を記し、確認できた方針、実施済みの対応、未実施事項を分けます。次の担当者と確認事項も共有し、未定の方針を決定済みとして記録しません。必要な支援や再連絡は職場の手順に沿って行います。

記録を短く書くコツはありますか?

本人の言葉・観察事実、実施した支援、反応、次の確認点を短く整理します。必要な評価は根拠とともに分けて書きます。記事の例文を使うときは実際の内容へ置き換え、実施していない支援や報告を転記しません。

参考・出典