2026年8月28日の介護給付費分科会では、介護現場におけるハラスメント対策が令和9年度介護報酬改定に向けた論点として示されました。新しい単位数が決まった段階ではないため、現場ではまず相談先、記録、複数名対応の判断材料をそろえます。

この記事の要点

介護現場のハラスメント対策|相談・記録メモの結論

第263回介護給付費分科会の資料をもとに、介護現場のハラスメント対策を、相談窓口、記録、複数名対応、地域連携の確認メモへ落とし込む実務と誤解しやすい点を整理します。

  • 2026年8月28日の第263回介護給付費分科会では、介護現場におけるハラスメント対策が令和9年度介護報酬改定に向けた論点の一つとして示されました。
  • 現時点で介護報酬や運営基準の新しい結論が決まったわけではないため、職場では制度の先読みより、相談窓口、記録様式、複数名対応の判断材料を確認します。
  • 利用者や家族を一律に危険視せず、職員の安全とサービス継続の両方を守るため、事実、対応、共有先、次回確認日を短いメモに残すことが重要です。

1今は論点を現場メモに落とす段階

厚生労働省は2026年8月28日、第263回社会保障審議会介護給付費分科会で「介護現場におけるハラスメント対策」を資料5として示しました。資料では、介護ニーズが高まる中で、介護従事者が職場や利用者・家族からハラスメントを受けず、安心して働ける環境整備が重要だと整理されています。

ただし、これは令和9年度介護報酬改定に向けた議論の資料です。新しい加算、単位数、サービス提供を断る基準がこの資料だけで確定したわけではありません。現場では「何が決まったか」より先に、「困ったときに誰へ相談し、何を記録するか」を確認する段階として扱うと実務に落とし込みやすくなります。

一人で抱えない相談と記録をテーマに介護職員が対応フローを確認しているイラスト図を拡大する

論点を読む

決定事項と分ける

現場メモにする

2資料で示された現在の取組を押さえる

資料5では、令和3年度介護報酬改定で、すべての介護サービス事業者に適切なハラスメント対策を求めたこと、カスタマーハラスメントについても方針の明確化等が推奨されていることが整理されています。訪問介護・訪問看護では、暴力行為や著しい迷惑行為等が認められる場合に、利用者や家族の同意を得たうえで複数名訪問を評価する仕組みも示されています。

また、同資料は、改正労働施策総合推進法に基づくカスタマーハラスメント対策が2026年10月1日から施行されることにも触れています。介護事業所では、一般企業のカスハラ対策として読むだけでなく、利用者支援、家族対応、訪問時の安全、サービス継続を同時に考える必要があります。

3職員が一人で抱えない相談窓口を決める

まず確認したいのは、相談する順番です。現場リーダー、管理者、サービス提供責任者、生活相談員、ケアマネジャー、看護職、法人本部、自治体窓口など、職場ごとに関わる人は違います。名簿だけでなく、「いつ」「どの内容なら」「どの方法で」連絡するかまで決めておきます。

たとえば、利用者宅で強い言葉が続いた、面会時に特定職員への要求が繰り返される、性的な発言がある、訪問前から不安がある、という場面を小さく分けます。訪問系サービスの安全確認は在宅介護従事者の安全確保でも扱っていますが、この記事では施設・通所・訪問をまたいで、相談と記録の流れに絞ります。

4記録は相手を責める文ではなく判断材料にする

ハラスメント対応の記録は、利用者や家族を決めつけるための文書ではありません。日時、場所、同席者、実際の発言や行動、職員の対応、本人や家族の背景として確認したこと、共有先、次回確認日を分けて残すことで、管理者や関係職種が冷静に判断しやすくなります。

「暴言あり」「家族が理不尽」とだけ書くと、次の勤務者が何を見ればよいか分かりません。「9月1日16時、送迎時に長男から予定変更の強い要求あり。職員Aが当日対応不可と説明。相談員へ16時20分共有。翌日ケアマネへ状況確認予定」のように、事実、対応、次の確認点をそろえます。表現は介護記録のNG表現と言い換えの考え方と同じです。

5複数名対応は現場判断だけで決めない

複数名訪問や同席対応は、職員の安全を守る大切な選択肢です。一方で、利用者や家族の同意、費用負担、サービス種別、自治体や法人の運用、介護報酬上の扱いが関係するため、現場職員だけで決めるものではありません。資料5でも、訪問介護・看護の複数名訪問加算や、基金による助成、ケアマネジャーを含む安全確保の方策が論点として示されています。

現場でできる準備は、複数名対応が必要かもしれない理由を事実で残すことです。危険を感じた場面、過度な要求の内容、退避や連絡の必要性、同行者が必要な時間帯、家族説明で確認したい点をまとめ、管理者や相談員へつなぎます。ヒヤリハット報告と同じく、再発防止に使える材料として残します。

6誤解しやすい点

一つ目の誤解は、ハラスメント対策を「利用者や家族を疑うこと」と受け止めることです。強い言葉や要求の背景には、病状、認知症の症状、家族の疲労、説明不足、生活上の不安がある場合もあります。背景を確認する姿勢と、職員を守る姿勢は両立させます。

二つ目の誤解は、職員の安全を守るためなら、現場判断でサービス提供を止められると考えることです。資料5でも、サービス提供しない場合の扱いは個別具体的な事情に照らして判断されると整理されています。現場では独自判断を避け、管理者、ケアマネジャー、自治体、必要に応じて法律の専門家や警察等との連携を確認します。

7職場でそろえる確認メモ

確認メモには、相談窓口、初動連絡、記録項目、複数名対応の相談基準、地域の連携先を並べます。連携先には、自治体、地域包括支援センター、主治医や医療機関、ケアマネジャー、法律相談、警察相談などが含まれる場合があります。すべてを毎回使うのではなく、どの場面でどこへつなぐかを整理します。

職員研修では、難しい制度説明から始めるより、実際の場面で「気づく」「離れる」「記録する」「相談する」「再発防止につなげる」の順に確認します。利用者支援の継続と職員の安全を同じ表に置くことで、我慢か拒否かの二択にしない対応を作りやすくなります。

8まとめ

第263回介護給付費分科会の資料5は、介護現場におけるハラスメント対策を、令和9年度介護報酬改定に向けてどう実効性あるものにするかを考える資料です。現時点では、制度の結論を先取りせず、既存の相談体制や記録様式を見直す材料として使うのが現実的です。

現場では、利用者や家族を一律に危険視せず、職員が一人で抱え込まない流れをそろえます。相談先、記録項目、複数名対応の相談基準、地域連携を短いメモにして、安心して働ける職場づくりとサービス継続の両方につなげましょう。

9よくある失敗と対策

よくある失敗対策
強い言葉を受けた職員が一人で抱える相談窓口、初動連絡、管理者共有の基準を勤務前に確認する
「困った家族」など評価語だけで記録する日時、場面、発言や行動、対応、共有先、次回確認日を事実で残す
複数名対応を現場判断だけで決める同意、費用、サービス種別、法人・自治体ルールを管理者と確認する
検討中の論点を決定事項として共有する第263回資料は論点整理として扱い、確定した通知や基準と分けて説明する

10よくある質問

介護現場のハラスメント対策で最初に確認することは何ですか?

最初に確認するのは、職員が相談できる窓口、管理者へ連絡する基準、記録に残す項目、緊急時の退避や複数名対応の相談手順です。職員個人の我慢や判断だけにしない流れをそろえます。

今回の介護給付費分科会で新しい加算が決まったのですか?

2026年8月28日の資料は令和9年度介護報酬改定に向けた論点整理であり、新しい加算や単位数がこの時点で決定したものではありません。現場では決定事項と検討中の論点を分けて共有します。

利用者や家族から強い言葉があったときはどう記録しますか?

人格評価ではなく、日時、場所、発言や行動、同席者、職員が行った対応、管理者へ共有した時刻、次に確認することを事実で残します。必要に応じて相談員、ケアマネジャー、看護職、自治体等へつなぎます。

参考・出典