介護保険最新情報Vol.1530では、車椅子利用者を自動車で送迎中の事故に関する消費者安全調査委員会の経過報告が共有されました。現場で出発前に見直したい確認点を整理します。
車椅子送迎の安全確認|出発前に見る固定とベルトの結論
介護保険最新情報Vol.1530と消費者庁の経過報告をもとに、車椅子送迎で確認したい車両固定、シートベルト、取説、記録・報告の視点を整理します。
- 介護保険最新情報Vol.1530は、車椅子利用者の自動車送迎中事故の経過報告を、介護現場の事故予防に活用するよう共有した通知です。
- 出発前は、車両の取扱説明書に沿って車椅子固定装置、4点フック等の固定、車椅子ブレーキ、シートベルトの通し方と密着を確認します。
- 事故やヒヤリハット時は、車両の固定装置の有無、車椅子固定の有無、シートベルト装着の有無を記録し、管理者と市町村報告へつなげます。
1今回の通知で押さえること
厚生労働省は2026年7月30日、介護保険最新情報Vol.1530として、消費者庁消費者安全調査委員会の「車椅子使用者を自動車で送迎中の事故に係る事故等原因調査について(経過報告)」を共有しました。通知は、介護現場での事故予防・未然防止に向けた取組の参考として活用することを求めています。
消費者安全調査委員会の報告は、調査途中の経過報告であり、事故の責任を問うためのものではありません。現場で大切なのは、個別事案の原因を断定することではなく、送迎前の固定、シートベルト、車両取説、事故時の記録項目を日常業務に落とすことです。
Vol.1530
経過報告
予防に活用
2事故は走行中の小さな動きでも起こる
経過報告では、2019年1月から2025年12月までの7年間に、車椅子使用者を自動車で送迎中の事故が49件確認され、そのうち介護サービスにおける送迎事故は34件、死亡事故は24件と整理されています。件数は確認できた範囲であり、すべての事故を網羅した数字ではない点にも注意が必要です。
対象としているのは衝突時だけではありません。発進、急ブレーキ、右左折、交差点での動きなど、日常の送迎で起こり得る場面も含まれます。いつものルート、短い距離、慣れた利用者であっても、出発前の確認を省略しない仕組みが必要です。
3車椅子固定を手順化する
車いす移動車には、車椅子を確実に車体へ固定する装置や、車椅子利用者が装着できる座席ベルト等の安全装備が求められています。ただし、固定方法は車両、固定装置、車椅子の形状で変わります。4点フック固定、ドッキング固定など、事業所で使う車両ごとに手順を確認します。
現場では「前2点、後ろ2点をかけたか」「フックを車椅子のどこにかけるか」「締め付け後に車椅子が動かないか」「車椅子のブレーキをかけたか」を声出しで確認します。方法が不明な場合は、記憶や慣れで済ませず、車両の取扱説明書、販売店、管理者確認へ戻します。

4シートベルトは通し方まで見る
経過報告では、車椅子のアームサポートやスカートガード等が、シートベルトの適切な装着を妨げる可能性も示されています。ベルトを「かけた」だけで終わらせず、アームレストの上を通っていないか、腰部ベルトが腰骨のできるだけ低い位置に密着しているか、緩みや隙間がないかを見ます。
利用者によっては、固定座席へ乗り移る、送迎時に適した車椅子へ乗り移る、日常生活でも送迎時にも使える車椅子を選ぶなどの検討が必要になる場合があります。ただし、乗り移り自体の負担や設備、人員体制も関わります。現場職員だけで決めず、家族、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、管理者と相談します。
5送迎前チェックを記録につなげる
送迎担当者の記憶に頼ると、忙しい朝夕に確認が抜けやすくなります。車両ごとに「固定装置」「車椅子ブレーキ」「4点固定」「シートベルト」「足台・衣類の巻き込み」「本人の姿勢」「荷物の位置」をチェック欄にし、出発前と到着時で確認できる形にします。
ヒヤリハットは、事故にならなかったから終わりではありません。「右折時に車椅子が少し動いた」「ベルトがアームレスト上を通っていた」「リフト操作中に待機位置が近かった」などを残すと、次の送迎前確認に直結します。書き方は介護記録のNG表現と言い換えと同じく、評価ではなく事実、対応、次の確認点でそろえます。
6事故時に残したい3つの項目
経過報告では、令和9年度から予定される事故情報報告システムで、同種事故を報告する際の例として、車両における車椅子を固定する装置の有無、車両への車椅子固定の有無、シートベルトの装着の有無が挙げられています。これは、現場記録でも先に押さえておきたい項目です。
事故や強いヒヤリハットが起きた場合は、利用者の安全確認と必要な受診・看護職共有を最優先にします。そのうえで、走行状況、座位姿勢の変化、固定とベルトの状態、同乗者の確認、家族連絡、管理者判断、市町村への連絡状況を時系列で残します。ヒヤリハットの整理にはヒヤリハット報告例も活用できます。
7職場で今日見直すこと
まず、送迎車ごとに取扱説明書と固定装置の種類を確認します。次に、車椅子の種類ごとに、固定できる位置、ベルトを通す位置、足台や衣類の巻き込みやすい場面を確認します。新人や応援職員が入っても同じ確認ができるよう、写真つきの手順書や車内掲示にしておくと運用しやすくなります。
最後に、送迎担当者だけで完結させないことです。介助時の乗り移り、転倒予防、福祉用具選定、事故報告は別々の担当に見えて、送迎では一つにつながります。立ち上がり介助の声かけと転倒予防や介護現場の転倒予防チェックと合わせて、出発前、走行中、到着後の安全確認をチームの標準にします。
8よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 車椅子のブレーキだけで固定できたと思い込む | 車両側の固定装置や4点フック等で車体に固定し、締め付け後に動きがないか確認する |
| シートベルトをかけたかだけを見ている | アームレスト等に妨げられず、腰部ベルトが低い位置で密着しているかまで確認する |
| 固定方法を慣れた職員の記憶に頼る | 車両ごとの取扱説明書を確認し、写真つき手順と出発前チェック欄に落とす |
| ヒヤリハットを送迎担当者だけで終わらせる | 固定装置、車椅子固定、ベルト装着、走行状況を記録し、管理者とチームへ共有する |
9よくある質問
車椅子送迎で出発前に最低限確認することは何ですか?
車両が車いす移動車として固定装置を備えているか、車椅子が車両に確実に固定されているか、シートベルトがアームレスト等に妨げられず腰部に密着しているかを、車両の取扱説明書と事業所手順に沿って確認します。
車椅子のブレーキをかけていれば固定は十分ですか?
十分とはいえません。車椅子のブレーキ確認は必要ですが、送迎車内では車両側の固定装置や4点フック等で車椅子を車体に固定し、利用者本人には適切にシートベルトを装着する確認が必要です。
事故やヒヤリハットが起きたら何を記録しますか?
発生時刻、走行状況、利用者の姿勢変化、車両の固定装置の有無、車椅子固定の有無、シートベルト装着の有無、直後の対応、家族・管理者・市町村への連絡状況を事実として残します。


